原始反射が見る力に影響を及ぼすことを皆さんは知っていましたか?
私はビジョントレーナーの勉強を始めるまで全くの無知でした。原始反射がどんなものかは知っていても、残存するケースがありその場合どんな影響があるのかなどは、知らない方も多いのではないでしょうか。
原始反射と見る力、子供の発達との関係性について簡単に解説します。よろしければご参照ください。
原始反射とは?
乳児さんに関わったことがある方なら、手のひらに指を置くとぎゅっと握ってくれたり、寝ているときに体をビクッとさせる動きを一度はご覧になったことがあるかと思います。
主に胎児期から乳児期に見られ、人間がこの世に誕生して成長していくプロセスの中で、必要不可欠となるこのような動作を「原始反射」と言います。
赤ちゃんは、自分の意志で危険から身を守ることや体を動かすことができないために、大脳の下にある「脳幹」という部位を使って、自分自身を無意識にコントロールしています。その脳幹が安定して大脳が発達すると、一部を除いた原始反射は自然と抑制されていくという仕組みになっています。
原始反射が抑制されないことによる困り感

個人差はあるものの、原始反射は通常、生後数か月から3歳頃までに抑制されることがほとんどです。
しかし、発達障がいや凸凹があると言われている子供たちは、原始反射が残りやすいことがわかっています。その場合、学習や運動面のパフォーマンスにも影響を及ぼし、さらに感覚過敏による自己防衛反応がでやすいのも特徴です。
危険を察知するのは脳幹によって行われますが、その脳幹が育ちにくく不安定な状態であれば、安全か危険かを識別できずに様々な場面において「危険!」と判断してしまいがちになります。
このような事が頻繁に起こると生きづらさを抱えてしまい、自尊心を育む機会さえも奪われてしまう可能性があるのです。
主な原始反射の種類
原始反射にはいくつもの種類があります。ここでは代表されるものをいくつか簡単にご紹介します。
◉モロー反射

音・光・動き・触覚などの変化に覚醒させて、危険に反応させるための反射。赤ちゃんが体をビクッとさせて両手を広げ、しがみつくような動作をします。
【モロー反射が残存した場合の影響】
- 環境の変化に対応できない
- 音・光・痛みなどの感覚過敏
- 集団行動が苦手
- 興奮しやすい
- 乗り物酔いをしやすい など
◉緊張性迷路反射

胎児期の姿勢や産道を通るために、体を丸めたり反り返す反射。平衡感覚器官との関わりが深く、頭の動きに伴って体も反射する仕組みになっています。
【緊張性迷路反射が残存した場合の影響】
- 体のバランス、姿勢を保てない
- 全身運動が苦手
- 視空間認知が弱い
- 板書が苦手
- 階段を下りるときに怖がる
◉脊髄ガラント反射

出産時、背中を刺激して腰を動かしながらスムーズに産道を通るための反射。刺激があった方に肩と腰が動きます。
【脊髄ガラント反射が残存した場合の影響】
- 夜尿症になりやすい
- 集中が続かない
- 動きがぎこちない
- 椅子にじっと座っていることが苦手
- 過度のくすぐったがり など
◉非対称性緊張性頸反射

出産時、頭が向いた方の手足を伸ばして、産道をスムーズに通るための反射。そのため赤ちゃんは生まれてしばらくの間、顔が向いている方の手足が伸びて、反対側が曲がっている状態で寝ています。
【非対称性緊張性頸反射が残存した場合の影響】
- 正中線越えが難しい
- 読み書きが苦手
- 左右の協調性が育ちにくい
- 球技全般が苦手な傾向 など
◉対称性緊張性頸反射

乳児期のハイハイで、上または下を向いたときに姿勢を保持する反射。上を向いたとき→上半身が伸びて下半身が曲がり、下を向いたとき→上半身が曲がり下半身を伸ばして、転ばないように姿勢をキープしています。
【対称性緊張性頸反射が残存した場合の影響】
- 姿勢保持が苦手
- 板書が苦手
- 視覚情報の見落としが多い
- 水泳、縄跳びが苦手 など
◉把握反射
物を握る反射。手のひらだけでなく、足裏にも同じ反射が存在します。物を掴んで握力をつけるために必要になる反射です。
【把握反射が残存した場合の影響】
- 手先が器用に使えない
- 球技が苦手
- ペンや鉛筆、箸が上手に持てない
◉探索反射
口周りを触った時に母乳を探すような動きの反射。この反射が胎児期に備わるため、赤ちゃんは生まれてすぐに母乳を飲むことができます。
【探索反射が残存した場合の影響】
- 口周りの感覚過敏
- 発語に遅れが出る
- 指しゃぶりがやめられない
- 偏食になりやすい
その他の原始反射に
- 《恐怖麻痺反射》=胎児期にストレスから守るための反射
- 《バビンスキー反射》=足指が反り返る反射
- 《バブキン反射》=手と口が一緒に動く反射
- 《ランドウ反射》=頭の位置で体を進展したり屈曲する反射
などがあります。

原始反射トレーニング=〈まずは反射を使い切るところからスタート〉
日本ビジョントレーニング普及協会による、べすとびじょん式検査「見る力ビジョンチェック」では、原始反射残存のチェックも行います。そこで子供がどの反射がどれくらい残っているのかをアセスメントして、ビジョントレーニングに原始反射抑制のプログラムを取り入れて実践しています。
発達凸凹の有無に関わらず、小学校低学年頃までの子供であれば多くの原始反射が残っていても不思議ではありません。園や学校、日常生活で大きな困り感がなければ、あまり神経質にならなくても大丈夫かと思います。

普段困っていることが多く、原始反射残存の影響が考えられる場合はまず、反射を使いきるというトレーニング(あそび)を行っていくことがとても効果的です。
例えば、把握反射であればとにかく握る動作を取り入れる、モロー反射であれば体全体を閉じたり開いたりを行うなどです。
【原始反射トレーニングの例】
- クマとカニ歩き〈非対称性緊張性頸反射・対称性頸反射〉
- 寝転びゴロゴロ回転〈緊張性迷路反射〉
- アヒル(外股)とハト(内股)歩き〈モロー反射〉
- スーパーマンとダンゴ虫ごっこ〈緊張性迷路反射・ランドウ反射〉
- 乾布摩擦〈脊髄ガラント反射〉
- ねんど、スライム遊び〈把握反射〉 など
これらのトレーニングは単調で繰り返しの作業になることもあり、子供のタイプによってはストレスになってしまう可能性もあります。無理強いはせずにスモールステップで、尚且つ遊び感覚で行っていくことがポイントです。


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