子供の発達に欠かせない感覚統合について解説します

感覚統合

ビジョントレーニングとも関係が深く、療育や特別支援教育に取り入れられることも多い感覚統合。言葉は聞いたことがあるけど、その中身をあまり知らないという方もまだまだいらっしゃることと思います。そんな方に向けて、感覚統合についてまとめてみましたのでぜひご覧ください。

感覚統合の始まり

1960年にアメリカの作業療法士だったエアーズ博士が、読み書きや計算などの学習につまずきがある子供の支援をしている中で、体幹やバランス感覚、注意集中などの領域にも課題があることを発見し「感覚統合理論」を生み出しました。

当初は学習障害の子供が対象であった感覚統合が、徐々に自閉症、知的障がい、ADHDなどの子供たちにも取り入れられるようになり、今日に至ります。

感覚情報の入力【感覚の栄養】

私達は毎日、様々な感覚を取り入れながら生活しています。例えば、中々開かない瓶の蓋を開ける時に顔にグッと力を入れたり、寝てはいけない状況で睡魔が襲ってきたら、頭を振ったり自分の顔をパンと叩いたり、そんな経験が誰しもあるかと思います。それぞれの場面で必要に応じた感覚を無意識のうちに補っているのです。これを「感覚の栄養」と捉えることもできます。

この感覚の栄養は脳の健康を保ち、心身を安定させるための重要な役割を果たしてくれます。どのような感覚をどの程度欲しているかは人それぞれですが、どんな人にも感覚の栄養は必要不可欠なものです。

感覚の処理・調整【感覚の交通整理】

外から入った感覚を適量に調整して脳に送り込み、感覚同士を繋げて秩序あるものにすることで、スムーズなアウトプットを行うことができます。これを「感覚の交通整理」と呼ぶこともあります。

この交通整理がうまくいかなかったら、感覚同士が交通渋滞を起こして脳が混乱し、必要な情報が伝わらないままになってしまいます。そのような状態が続くと、集中や注意力、自尊心、抽象的思考、コミュニケーション力、教科学習などの能力が身に付きにくくなることが考えられます。このような能力の基盤となるのがまさに感覚統合なのです。

複雑に絡み合う【感覚過敏】【感覚鈍麻】

感覚処理の仕方は人それぞれですが、発達につまずきや凸凹がある子供たちは感覚処理も適切に働かないケースが多く、《感覚過敏》または《感覚鈍麻》の状態になりやすいと言われています。

《感覚過敏》の人は外から入ってくる感覚刺激を過剰に嫌がるため、感覚を回避することもあります。音や光、人に触られる、揺れなど外界からの感覚刺激にとても敏感で、戦う・逃げる・固まるなどの自己防衛反応が出現しやすくなります。性格だと思われている「怖がり」「臆病」などは、このような感覚の過敏さからきている場合もあります。

《感覚鈍麻》は文字通り感覚に気づきにくい状態を指します。大人から見たら意味もなく動き回る子供の行動が実は、感覚を補うための「感覚探求」になっている可能性もあります。感覚が入らない状態が心地悪くて、自分で感覚を取り入れようとしているのです。

一概に「この子は《感覚過敏》」「あの子は《感覚鈍麻》」のように区分けすることが難しく、「感覚過敏でもあり感覚鈍麻でもある」といった子供も非常に多いです。一人一人どの感覚に過敏で、どの感覚が不足していて補ったらいいかを見極めることが必要になります。

大きな音でも「工事現場の音は比較的平気だけど人の甲高い声に過敏」や、揺れの感覚でも「前後の揺れ(エスカレーターなど)は大丈夫だけど上下の揺れ(エレベーターなど)には過敏」などのケースもあります。

また外から入ってくる刺激と自分で取り入れる刺激では、当然感じ方が違います。外からの刺激に過敏でも、自ら感覚を取り入れるのを好む人もいます。相手から触られるのが苦手でも、自分から触るのは平気、のように一見矛盾して見える行動もこのような背景から起こっているのです。

五感+前庭感覚+固有感覚

感覚統合では、五感と言われるうちの「視覚」「聴覚」「触覚」+「前庭感覚」「固有感覚」の5つの感覚を中心にアプローチすることを基本としています。そのうち特に重要視される3つの感覚について以下に触れていきます。

情緒の安定にも関わる【触覚】

皮膚感覚のことで、私たち人間を含め様々な生物にとっても危険を察知する重要な情報源になっています。また、人とのかかわりを育てたり、情緒の安定や心の形成のためにも働いています。

「危ない!」と危険を回避するための機能と、「これは大丈夫」と識別する機能がそれぞれの状況に合わせて働く必要があります。これらがうまくいかないと対人関係を築きにくかったり、情緒が不安定になるなどの問題として表れることがあります。

そして触覚に過敏さがあると、人混みが苦手で集団の中に入ることへ抵抗があったり、過剰に疲れてしまう傾向も見られます。

私が実際関わったなかで、知っている誰かが不意に近づくと「急に近づかないで!」と怒ってしまうお子さんがいました。もちろんその子に悪気があるわけでも、相手を嫌いなわけでもありません。

このように極端な例だと、人に近づかれるだけでも強いストレスになり、場合によってはトラブルに発展してしまうケースもあるのです。

触覚を育てる遊びの一例
  • ねんど遊び
  • 砂遊び
  • 背中文字
  • トンネルくぐり
  • ボールプール
  • 触れ合い遊び(マッサージ)
  • 巾着に何が入っているか当てっこ遊び など

背中文字やマッサージは、痛くない程度にしっかりと圧をかけることがポイントです。

初めは本人の抵抗が少ない感覚を短い時間から取り入れ、無理なく行っていくことで徐々に触覚情報が適切に入力、処理されるようになります。

視覚情報とも関連が深い【前庭感覚】

地面の傾き、重力、加速の情報伝達をする感覚のことです。この情報は日常において意識されることはほとんどありません。三半規管、耳石器で感知しています。

主に視覚や固有感覚の情報とつながることが多く、頭の位置や姿勢を垂直に保ったり、バランスが崩れたときに姿勢を立て直すための重要な役割を果たしてくれます。

前庭感覚をうまく感知できないと、歩き方がぎこちない、椅子からずり落ちてしまう、転んでも手が出るのが遅い、などの特徴が表れやすくなります。

また、頭が動いていてもしっかりと物を見ることができるように眼球運動の調整も担っています。

小さい子供が、一見目的もなくクルクル回っていたり、ミニカーを動かしながらタイヤを眺めているのを見たことはありませんか?そのような行動は、この前庭感覚を自ら取り入れようとしていることが考えられます。

前庭感覚を育てる遊びの一例
  • トランポリン
  • ブランコ
  • 寝転びゴロゴロ
  • ケンケンパー
  • バランスボールに乗る
  • バランスボードに乗る
  • タンデム歩行(一本橋歩き) など

不安定な姿勢で過ごす時間を作ってあげることで前庭感覚が育ちます。大きなケガにつながらないように安全を確保したうえで、ダイナミックな遊びがたくさんできる環境を、大人側が作ってあげられるといいですよね。

ボディイメージを育てる【固有感覚】

筋肉や関節を使っているときに伝えられる感覚です。自分の体がどの位置にあって、どんな姿勢をしているのかの情報を脳に送っています。前庭感覚同様、ほとんどが無意識に処理されています。

他の感覚は外部からの情報を受け止めることが中心ですが、固有感覚は身体内部からの情報を脳に伝えています。

自分の体を上手に使うためには、触角や前庭感覚からの情報とつながって、身体図式や運動行為機能を高めていく必要があります。

この固有感覚に鈍感な子供は、乱暴な印象を与えてしまうことが度々あります。力加減ができずに友達をわざとではないのに押してしまったり、体に刺激を入れたくて壁や机をどんどん叩く子供もいます。

多動になりやすいのも、このようなタイプの子供に多いことが言えます。

固有感覚を育てる遊びの一例
  • 鉄棒(ぶら下がりでもOK)
  • 雲梯
  • ジャングルジム
  • つなひき
  • 押しくらまんじゅう
  • 重いものを運ぶ
  • 思いっきり走る

固有感覚刺激を欲している子の場合、まずは大きな感覚が入る遊びから始めて、少しずつ小さな刺激にしていき、最後は単調な体操(準備体操のような)などで閉めるのがお勧めです。

感覚統合療法と感覚統合遊び

感覚統合療法」とは、正式なトレーニングを受けたセラピストが行うものであり、通常の療育、特別支援教育、保育などで行われるのは「感覚統合の考えを活かした遊びや活動」になります。

私はビジョントレーナーとして感覚統合について学んでいる者ではありますが、感覚統合セラピストではありませんので、見る力に直結するような「感覚統合遊び」をビジョントレーニングの中で取り入れています。

見る力と感覚統合

見る力が弱いことの原因に、感覚統合の問題が関わっていることが少なくありません。空間の中で物がどんな色や形、動きをしているのかを脳に提供して、前庭・固有・触覚情報と協働していることが知られています。

また眼球を動かす筋肉は、固有感覚情報を使いコントロールされていたり、頭の回転を伴う視野のズレを補正するためには前庭感覚情報からの助けが必要になります。そして見たものに手を伸ばして触る経験をすると、慣れたものであれば見ただけで触覚や距離を認識することができるようになります。

視空間認知に困難を抱えている子供は、このような感覚情報処理にも課題を抱えている可能性が高いと言えます。

天気のいい日は公園で遊びましょう

近年は公園や外遊びの機会がすっかり減ったことで、子供たちの身体機能が低下しているとも言われています。昔に比べたら少なくはなったものの、公園には様々な感覚統合にも最適な遊具が揃っています。

例えばブランコであれば、スピード・傾き・揺れを感じる(前庭)姿勢保持・足の屈伸・鎖を握る(固有)距離感(視覚)を促してくれる要素があります。そして肌で風を感じたり、遊具に触れている間、触覚にもアプローチしています。

時間の許す限り、外気や草木などの自然に触れながら公園で遊ぶ機会を増やして、ぜひ子供の発達の土台作りをしていただけたらと思います。

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